バンブーハーベスター#
見渡す限りの草原が広がる北海道北部. 現在こそ,乳牛放牧が行われたり,8月には2番牧草のロールベールが転がっていたりする,観光客の足を止める北海道らしい景色であるが,ほんの70年前までは,ササがはびこる原野であった.
北海道北部で稼働するロータリーティラー
ササは厄介者#
北海道林業試験場の報告によると,ササ類は日本特有のイネ科植物であって,主な分布は温帯北部より亜寒帯におよび,とくに北海道にはもっとも普遍的に分布するようであり,宗谷丘陵にはチシマザサ,豊富や天塩などにはクマイザサという種類のササが分布しているようである.また日高や帯広,釧路にかけてはミヤコザサが多い. そんなササが生えている地域を草地に転換しようとする時,地表部だけを刈払ってあるいは燃やしてしまえばよいのではと考えてしまう.
しかし,URBAN KUBOTA No.24の談義によると,ササはルートマットと呼ばれる地下部の根茎が非常に発達しているようで,地下茎をしっかり除去しないと営農上問題になるとのこと. また地下茎は,表土をガッチリと保護しており,レーキドーザー等でササを持ち出そうとすると,表土もたくさん持っていかれてしまい,労力は多く,仕上がりも綺麗にはならないそうだ. 腐食がたくさん含まれている表土には,播種後の作物に水を供給して初期生育を安定化させる機能が含まれているため,表土の持ち出し,というのはとても好ましくない. ササ地帯の開拓は,そんなに簡単ではないのだ.
ロータリーティラーの登場#
普通の耕地開拓は,立木を伐採して,残株を抜排根し,ブラッシュブレーカーで土壌を反転耕起し,ハローで砕土,という工程が用いられる. この伐採から砕土までを一貫して行えないかと考えた時,「ロータリーティラー」が用いられた. アイディア自体は,shread king 8000 FEのような,アメリカの機械なのだろうけど,日本製でも作ろうということで,日熊工機はロータリ・ティラRT-200, RT-200Aなどを開発したのだ.
この機械は,日産UD504エンジンが搭載された牽引型のロータリティラーであり,全長6.4 m 程度,作業幅1.98 m となっている. エンジン駆動をプロペラシャフトとローラーチェーンを介してローターに伝え,特殊タインを170 または306 rpm で回転させて灌木や地下茎を破砕し,また土壌と混和・砕土する. 最大の耕深は26 cm 程度であり,ササの地下茎の深さが20 cm 程度であることを考えると,ちょうどよい深さと考えられる.
3面図
しかし, 吉田1965 で触れられているように,RT200はチシマザサの密生地では利用ができないようで,ササの植生密度が小さいところであっても,走行速度0.36 m/sec 程度だと耕起砕土できるようであるが,0.55 m/sec と少し高速になると,耕うん駆動軸がササを倒伏させ,その上を浮上しながら走行するという状況担ってしまうようだ.というのも,RT200Aの油圧回路図を見ると,ローター上下は単動シリンダーであり,押さえつける力は働かず,自重でのみ貫入する機構であるためである.
ササ地帯用ロータリーティラーRT230: 通称「バンブーハーベスタ」#
吉田1965 でも紹介されているRT200の改良型,RT230は三菱DH-24Pエンジン210PS, 作業幅2.3m 最大耕起深300 mm の大型機で,ローター速度も高速500, 低速250 rpmの作業速度,作業効率が共に向上したササ地帯用ロータリーティラーである.
北海道の特殊土壌でも紹介されている通り,この改良型機RT230がバンブーハーベスターであろう.
吉田1965では,RT230はRT200に比べ,ササは切断されやすくなっているようで,ミヤコザサでもチシマザサであっても,前処理無しに,それなりの耕地に変換できるようである. 全ての工程を1台で統合し,作業効率を上げることができるというのは,理想論のようで,それなりに努力は必要であるとの結論だ. 高速作業はまだできないようで,エンジン出力を増大させる必要性も述べている
バンブーハーベスタの限界#
アーバンクボタの談義では,「技術的には可能だけど,事業としては,そんなまどろっこしいことじゃどこも引受けないよ」という記述があった. これは公社として抜排根から砕土までを一貫して行う機械を投入するとどうやって計算したらよいのかよくわからんという,既存の損料とどう対応させればよいのか,ということだろうか. あるいは,場所によってはロータリーカッターによるササ刈りや薬剤散布によるササ枯らしが必要になるという「条件依存」の機械であることが損料計算をややこしくさせることかもしれない.
また,吉田1965や斉藤1990でも延べられているが,バンブーハーベスターは大型の機械であり,広い平坦地でないと作業能率を上げることが出来ず,また,ササの切断長もそれほど短くなく仕上がりもそれほど綺麗にならないことから,ほとんど利用されなくなってしまったようだ. 斉藤は今のところ,ササ地帯で能率,精度ともよく造成する方法はないと結論している.