СН-4Б картофелесажалкаとMotokov・Белинсксельмашの関連調査
СН-4Бの製造元とモデル変遷
ソ連の4条(四列)用じゃがいも植付け機 СН-4Б(英字転写: SN-4B)は、1950年代後半から開発・生産が進められた機械で、その製造は主にロシア・ペンザ州カーメンカ市に所在する国営工場「Белинсксельмаш(ベリンクセルマシュ)」が担っていました。Белинсксельмаш工場は1940年代から農業機械を製造し、1953年には早くもじゃがいも植付け機の量産を開始しています。СН-4Бは1960年代に改良型モデルとして登場し、1967年のモスクワ国際見本市で金メダルを受賞するなど高い評価を受けました。この機械はソ連各地の集団農場・国営農場で広く導入され、Белинсксельмашはソ連時代を通じてソ連有数のじゃがいも植付け機メーカーとなりました。
СН-4Бは基本的にトラクターに装着する4条植え付け機(ナビ式、3点ヒッチ装着型)で、種芋タンク(ホッパー)や植付け装置、肥料散布装置などを左右2つのブロックに分けて搭載しています。片側2条ずつの二つのセクションから成り、それぞれに種芋用ホッパーと2組のカップ式植付け装置(回転スプーンによる拾い上げ機構)、肥料施用機構、開削用の鎬(すき)と覆土ディスクが備わっています。植付け時は畝立て植付け(リッジプランティング)にも平畝植付けにも対応し、条間距離は60cmまたは70cmで調整可能、芋の株間も20~40cmの範囲で変速スプロケットにより変更できました。植付けと同時に粒状肥料を条溝内に別施用できるのも特徴で、肥料は種芋より下層に散布され、その上に土を薄く被せてから芋を落として植え付けます。この機構により、肥料焼けを防ぎつつ植付けと施肥を一工程で行います。
СН-4Б картофелесажалкаの構造図(イメージ)
図はСН-4Бの作業機構模式図です。
1 – ホッパー(種芋タンク)、2 – 撹拌装置(芋詰まり防止の揺動板)、3 – 攪拌シャフト(芋をかき混ぜ前進させるアクティブロータ)、4 – フィードバケット(種芋を掬い上げ部に送り出す傾斜部)、5 – オーガ(スクリュー)、6 – 掬い取りスプーン(円盤上に等間隔に配置された匙形の芋掬い具)、7 – 押さえバネ(芋をスプーンから落とさない抑え)、8 – 肥料播種装置、9 – スプリング付きロッド、10 – 肥料管、11 – 覆土ディスク(左右一対の土かぶせ円盤)、12 – 小さなハロー(溝ならし板)、13・14 – 鎬(すき)(開溝用の単体植付け用鎬)、15 – 後置きの緩土器(トレーナー、ドラッガ)、16 – 追従車輪(地面起伏追随用のコピー車輪)
走行中、ホッパー底の傾斜面に沿って種芋が送り出され、スプーン式の掬い取り円盤が一定間隔で芋をすくって条溝へ落下させます。同時に溝底には肥料管から粒状肥料が落とされ、植付け後はディスク(11)で両側から土を寄せて芋に覆土します。このように比較的シンプルな機械構成ながら、1ヘクタール当たり約5~7万個の種芋を規則的に植付けでき、労力の大幅削減に貢献しました。
СН-4Бの性能と仕様は、4条植付け幅2.8m(畝間70cm×4)、作業速度約5~6km/h、1時間あたり約1.3ヘクタールの植付け能力を持ちます。ホッパー容量は芋密度にもよりますが、1ヘクタール当たり必要な種芋(約5.9~7.1万塊)を格納できる程度の大きさです。機体重量は約1.1トンで、走行中は後方の補助車輪(追従輪)で機体を支持しつつ植付けを行います。牽引・装着するトラクターには後部PTO(パワーテイクオフ)による駆動力供給が必要で、50~80馬力級(最低50馬力程度、推奨80馬力以上)のホイールトラクターが適合します。具体的にはMTZ-50/80/82型ホイールトラクターや、より重牽引力のあるT-4AやDT-75N型のクローラートラクターでも使用可能とされました。適切な馬力のトラクターと組み合わせれば、畝立て・溝掘り・播種・施肥・覆土を一連で同時に行えるため、大規模なじゃがいも作付に威力を発揮しました。
生産開始以来、СН-4Бにはマイナーチェンジや派生型も存在しました。例えばСН-4Б-1やСН-4Б-2といった改良版が開発され、植付け機構の高速化・精度向上が図られています。ソ連の専門設計局(GSKB)による研究の結果、1960年代末には植付け機構(カップ式播種装置)の設計を刷新し、毎秒6~7個だった芋の取り上げ頻度を10~11個/秒にまで向上、対応可能な作業速度も約8~9km/hまで引き上げられました。これにより高速度での正確な植付けが可能となり、植付けムラ(等間隔性)や欠株率も大幅に改善しています。このような継続的改良はソ連各地の試験機関や農業研究機関と連携して行われ、得られた知見は後継モデルの設計にも活かされました。
СН-4Бと「Мотоков」(Motokov)の関係
**「Мотоков(Motokov)」とは、チェコスロバキア社会主義共和国(当時)に存在した国営の輸出入企業(貿易会社)**の名称です。Motokov社は主にチェコスロバキア製の自動車や農業機械、トラクター(例えばZetor社のトラクター)などを西側諸国や他地域へ輸出する窓口となっていた組織で、プラハに本社ビルを構えていました。1970年代頃の日本企業の記録にも、Motokov公団がチェコスロバキア製のゼトア(Zetor)・トラクターの技術提携や輸入に関与したことが記されています。このようにMotokovはチェコスロバキアの機械類輸出ブランド・商社として広く知られていました。
では、ソ連製のじゃがいも植付け機СН-4БとMotokovに何らかの関係があったのでしょうか。調査した限り、СН-4Бはソ連国内ではその型番(СН-4Б)で呼称・供給されており、「Motokov」は製品の別名ではありません。Motokovはメーカーではなく貿易会社ですので、СН-4Б自体の製造には直接関与していません。また、チェコスロバキア国内には独自のジャガイモ植付け機(「sázeč brambor」と呼ばれる機械)が存在し、例えばKSM-4(後述)などがチェコスロバキアで製造・使用されていました。したがって、СН-4Бが西側向けにMotokovブランドで輸出されていたという明確な事実は見当たりません。
可能性としては、東側諸国間の協定や貿易経路を通じて、ソ連製のСН-4Бがチェコスロバキア経由で第三国に提供されたケースも考えられます。しかし、そうした場合でも製品名自体が「Motokov」に変わることはなく、せいぜいMotokov社がソ連製農機の輸出代理を務めた程度ではないかと推測されます。当時、チェコスロバキアのMotokov社はインドなどへの農機供給計画にも関与しており、トラクターや収穫機器の技術供与を行った例があります。しかし、ソ連のじゃがいも植付け機に関しては、輸出の主導権はむしろソ連側の外貿公社(例えばSojuzkhartomasなど農業機械専門の貿易機関)にあったと考えられます。結論として、「Motokov」はチェコスロバキアの機械輸出ブランドであり、СН-4Бの別名ではありません。両者の直接の関連性は薄く、MotokovがСН-4Бを扱った可能性があるとしても、それは単に貿易上の仲介的役割に留まるでしょう。
СН-4Бと「Белинсксельмаш」の関係
前述の通り、Белинсксельмаш(ベリンクセルマシュ)はСН-4Бの主たる製造元であり、ソ連時代を通して同機の生産拠点でした。Белинсксельмашとは正式にはПензенская ордена Трудового Красного Знамени сельскохозяйственная машиностроительная опытно-производственная база「Белинсксельмаш」などと称された国営企業で、ペンザ州の小都市カーメンカ(旧称ベリンスク)に所在します。第二次世界大戦中の1941年にウクライナの機械工場が同地に疎開・移転して創設された経緯を持ち、戦後は種まき機(シーダー)や耕耘具など様々な農機を製造してきました。1948年頃には既に「Белинсксельмаш」の銘を冠した種まき機を生産しており、1953年からジャガイモ植付け機の生産を本格化、以来ソ連国内最大のジャガイモ植付け機メーカーとして君臨しました。
Белинсксельмашが製造したСН-4Бは上述の通り1960年代後半に高評価を受け、その後も同社は継続して当機やその改良型を生産しました。ソ連末期から1990年代初頭にかけても、Белинсксельмашは市場の需要に応じて**小規模農家向けの2条植付け機( двухрядная картофелесажалка )や、それに対応する1条・2条用の芋掘り機(картофелекопалка)なども新たに開発・製造しています。ソビエト連邦の崩壊後、Белинсксельмашは株式会社化されつつもロシア国内向けの農機製造を続け、2010年代に至っても「ロシアでジャガイモ植付け機と言えばБелинсксельмаш」**と評される主導的地位にあります。
なお、СН-4Бの後継機種としては、ソ連時代末期に登場したСКС-4やКСМ-4/КСМ-6などのモデルが挙げられます。例えばСКС-4は4条植付け機ながら大型のホッパー(300kg級の肥料・種芋容量)を備え、大規模圃場向けに補助作業を減らした設計となっていました。一方、КСМ-4(4条)およびКСМ-6(6条)は、植付けと同時に耕耘(畝立て犂)も行える**「複合型(комбинированный)ジャガイモ植付け機」として開発されました。これらは従来のСН-4系とは設計コンセプトが異なり、別途プラウ(犂)で耕起しておかなくても一工程で耕起+植付けを可能にする点が特徴です。KSMシリーズはウクライナ・ポルタヴァの工場でも製造され、「Полтавчанка(ポルタヴァ娘)」の愛称で知られました。また、ベラルーシのリダ(Lida)の工場(現リダセルマシュ)でもL-201, L-202, L-207**といった型番の2条植付け機が生産されており、これらはБелинсксельмаш製の技術をもとに小規模農家向けへ展開されたモデルです。このように、Белинсксельмаш製СН-4Бの基本設計はソ連各地で派生型・後継機種を生み、需要に応じた形で各メーカーに継承されていきました。
СН-4Б・派生機の特許情報
ソ連の農業機械分野では、西側諸国でいう特許に相当する「発明者証(Авторское свидетельство)」が数多く登録されており、じゃがいも植付け機に関するものも例外ではありません。1959年10月15日には既にジャガイモ植付け機に関する発明が出願されており(Авторское свидетельство №128676)、これはおそらくСН-4シリーズ初期型の基礎となる設計についてのものでしょう。その後も1960年代から70年代にかけて改良に応じた出願が相次ぎ、1972年にはクラスA01C9/04(農業用植付機械)分野でソ連発明者証№422376および№431835が登録されています。また1980年代にも、例えばSU1410886A1(公開1988年)など、じゃがいも植付け機の信頼性向上や多用途化に関する技術が数多く考案・公開されています。
СН-4Бそのものの構造も、後年の発明者証の中で既知の標準技術としてしばしば言及されています。例えばロシアの実用新案RU150371U1の明細書では、従来技術として「2つのセクションを持ち、それぞれにホッパー・2基の植付け装置・肥料施肥装置・鎬・覆土ディスクを備えたКартофелесажалка СН-4Б」が紹介されています。このようにСН-4Бの構成そのものが一種の標準となり、様々な改良発明のベースラインになっていることが読み取れます。
一方、チェコスロバキアやその他の東欧諸国におけるСН-4Б・類似機の特許については、特定のデータは見つかりませんでした。チェコスロバキアでは自国メーカーの農機も発達していたため、ソ連の設計をそのまま導入した例は少なかったと考えられます(むしろMotokov社を通じて輸入された西側機械の技術導入の方が多かった可能性があります)。したがってСН-4Бそのものに関する特許はソ連(現在のロシア)国内の「発明者証」に留まり、国外では顕著な特許取得事例は無いようです。ただし、ソ連製のカップ式植付け機構は当時世界的にも一般的技術であり、たとえソ連が西側に特許出願していなくとも類似の機構は各国で見られました。そのため、СН-4Б固有の技術が海外で特許化されたケースは考えにくいものの、ソ連国内では上述のように多くの権利化が図られていたと言えます。
ソ連・ロシアにおける主要なКартофелесажалка(じゃがいも植付け機)の概要
ソ連時代から現在のロシア・CIS諸国にかけて使用されている主なじゃがいも植付け機について、モデル、メーカー、技術的特徴、利用状況の観点から概観します。
主なモデルと特徴
ソ連で機械化されたじゃがいも植付け機の系譜は、大きく4条植付けの標準機と、そこから派生した大規模向け機・小規模向け機に分けられます。まず標準となったのが、前述したСН-4(4条植付け機)シリーズです。これは「Сажалка Навесная 4-х рядная(4条式トラクタ装着型植付け機)」の略と考えられ、馬鈴薯を4列同時植付えする機械でした。初期型のСН-4(A, Бなどのサブ型番なし)は1950年代に試作され、手動補助を必要とする半自動型でしたが、改良を経て完全自動カップ式のСН-4Бが主力モデルとなりました booksite.ru booksite.ru 。СН-4Бシリーズは植付けピッチの均一性や堅牢さで信頼性が高く、1960~80年代のソ連で最も普及したじゃがいも植付け機です penzanews.ru 。
その後継として登場したのが、СКС-4(4条)やСКМ-3(3条)・СКМ-6(6条)などの**「СК」(Самоходная/Комбинированная Картофелесажалка?)系列、およびКСМ-4/КСМ-6**(Комбинированная Сажалка Картофельная)系列です booksite.ru 。SKS-4は前述のように大型ホッパーを備え補給回数を減らした4条機で、広大な畑で休止時間を最小化することを目指したモデルです booksite.ru 。一方KSM-4/6は耕耘と植付けの複合作業を可能にしたモデルで、植付けながら同時に二連犂で畑を耕す構造が特徴です freepatent.ru freepatent.ru 。これにより未耕起の荒地でも一度に植付け作業を完了でき、小区画向けに効率的でした。KSMシリーズにはウクライナ製の「Полтавчанка KSM-4」 selhoztehnika.net などチェーン式伝動を採用した機種もあり、地方独自の改良が加えられています。
さらに小規模農家・園芸向けには、2条植付け機や1条植付け機も各メーカーから供給されました。ソ連末期にはБелинсксельмашも2条のСН-2系試作を行いましたが、商業的に定着したのはむしろベラルーシ製やウクライナ製の2条機でした。例えばベラルーシ・リダの「Л-201」「Л-207」 selhoztehnika.net 、ウクライナ・キロヴォグラード(当時)の「КСН-2」シリーズなどが代表例です selhoztehnika.net 。Л-207はベラルーシ国産の2条ナビ型植付け機で、ベルarus製小型トラクターにも装着できるよう設計されています。КСН-2は「Картофелесажалка Навесная 2-рядная」の略で、やはりトラクターの標準3点リンクに装着する2条植付け機です selhoztehnika.net 。これらの小型機は大農場よりも個人農や小規模菜園での利用を想定しており、ソ連崩壊後の1990年代に需要が伸びました penzanews.ru 。 主な製造メーカーとその役割
ソ連時代を通じてじゃがいも植付け機の主導的メーカーだったのは前述の**Белинсксельмаш(ロシア・ペンザ州)**です penzanews.ru 。同社は標準4条機を大量生産するとともに、各種派生モデルの開発母体ともなりました。Белинсксельмашが供給したСН-4B系列は、ソ連全土の大・中規模農場に行き渡り、その信頼性から「ベリンクセルマシュに外れ無し」とまで言われました。
他の重要メーカーとしては、ベラルーシのリダセルマシュ(旧リダ機械工場)が挙げられます。リダセルマシュは元々根菜類の収穫機や播種機を手掛けており、ソ連末期にБелинсксельмашと協力して2条・4条の植付け機を製造しました。型番L-20xシリーズがそれで、ベラルーシ国内やバルト三国の農家向けに販売されています selhoztehnika.net 。またウクライナのポルタヴァ農機工場も、独自ブランド「Полтавчанка」でKSM-4を製造しました selhoztehnika.net 。ポルタヴァ機はチェーン式駆動の採用や構造簡素化など地域ニーズに合わせた改良が特徴でした。その他、ソ連各地の修理工場や機械メーカーが、小規模にСН-4Bをコピー生産した例もあります(型番に地域名が付くことがある)。
現在のロシア連邦に目を転じると、Белинсксельмашは引き続きじゃがいも植付け機を製造しており(社名はそのままか、統合によりAO「Пензмаш」等となっている可能性があります)、ロシア国内市場シェアの大部分を占めます penzanews.ru 。加えて、ベラルーシのリダセルマシュやミンスクのゴムセリマシュ(Gomselmash、収穫機メーカーですが関連機種を製造)も、CIS市場向けに植付け機を供給しています。ウクライナではソ連崩壊後もポルタヴァの系譜を継ぐメーカーがあり、また新興の小企業も自走式の小型植付け機などを開発しています。こうしたメーカー間競合はあるものの、基本的な設計思想や規格(条間隔や接続規格)はソ連時代からの標準を踏襲しており、各部品の互換性も高いです。結果として、例えば旧式のСН-4Бを今でも修理・再塗装して使っている農家も多く、スペアパーツも入手しやすい状況です selhoztehnika.net selhoztehnika.net 。
実際のСН-4Б本体の写真です(2001年製の中古機)。2つの大型ホッパーが左右に配置され、それぞれの下に2条分の植付けユニット(掬い取り円盤や開溝鎬、覆土ディスクなど)が見えます。赤錆色の簡素な構造ですが堅牢に作られており、適切に整備すれば数十年にわたり使用可能です。ホッパー後部には油圧式のマーカー(畝立て用の印を付けるマーキングアーム)も装備され、隣接する条のガイドとすることで条間を正確に保つ工夫もなされています selhoztehnika.net 。このようにソ連・ロシアの植付け機は、シンプルさと耐久性を重視した設計で長く愛用されています。 技術的特性(植付け能力、必要馬力、トラクター適合性など)
ソ連製じゃがいも植付け機の代表的な技術仕様をまとめると以下のようになります selhoztehnika.net igarden.decorexpro.com :
植付け幅(作業幅):4条機で約2.8m(条間60~70cm)、2条機で1.2~1.4m程度。
作業速度:標準4条機で5~7km/hが推奨。改良型では最大8~9km/hまで可能
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植付け能率:4条機の場合、1時間あたり約1.0~1.5ヘクタール(機種により差異)
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。1日8時間換算で8~12ヘクタール程度の植付けが可能。
種芋株間:20~40cmで調節(スプロケット交換により変更)
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。植付け密度はおおむね1ヘクタール当たり5~7万塊となる。
ホッパー容量:1ホッパーあたり数百kgの芋を収納可能。標準4条機で種芋約300kg+肥料数十kg程度(モデルにより異なる)。
必要牽引力・馬力:4条機で最低50馬力程度、推奨80~100馬力のトラクター
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。6条機では120馬力以上推奨。2条機なら20~40馬力程度の小型トラクターや歩行型トラクターでも牽引可能
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適合トラクター:MTZシリーズ(MTZ-50/80/82 等)やT-40、T-54などホイールトラクター、DT-75やT-4系列のクローラートラクターなど、標準的なリアPTO装備トラクターならば装着可能
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。装着は3点リンク方式で、自動着脱装置を備える機種もある
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駆動方式:PTOによるチェーン・ギア駆動が主流
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。車輪で地面速度を検知する方式ではなく、トラクターの速度と同期しやすいPTO駆動により、植付け間隔が走行速度に影響されない利点がある
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重量:4条機で1.0~1.3トン前後、2条機で0.3~0.6トン程度。後部に支持輪を持つナビ型の場合、牽引時の実質荷重はトラクターにかかる一部と支持輪に分散される。
技術的特性上の工夫として特筆すべきは、石礫地帯や粘土質土壌への対応です。ソ連製植付け機の鎬(オープナー)には、交換式の先端や石跳ね飛ばし用のガードが用意されていました。例えば標準の鎬先端は鋭角に尖っていますが、石の多い圃場向けには鈍角な「камнеотражатель(石除けプレート)」付きの鎬先端を装着し、石に当たっても跳ねやすく詰まりにくい構造としています。また植付け装置自体も、芋サイズの大小にある程度対応できるようスプーン形状やバネ圧を調整可能でした。小粒の種芋では2個同時掬いを避け、大粒では落下詰まりを避ける工夫です。このような技術的配慮により、ソ連の植付け機は黒土(チェルノーゼム)地帯から湿潤な泥炭地、砂礫混じりの土壌まで幅広い環境で使用可能となっていました。
利用地域や作物条件
じゃがいも植付け機СН-4Бおよびその派生機種は、ソ連全域のジャガイモ生産地域で利用されました。
特に生食・加工用ジャガイモの主要産地であるロシア非黒土地帯(中央・北西ロシア)やベラルーシ、バルト三国、ウクライナ西部などでは、集団農場(コルホーズ)や国営農場(ソフホーズ)に数多く配備され、大面積のじゃがいも畑で活躍しました。
作物条件としては、ソ連時代の植付け機は発芽前(休眠中)の種芋を植える設計になっていました。発芽済みの芋は機械植付けで芽を損傷しやすいためですが、一部には芽傷みを軽減する軟調なカップを採用した例もあります。しかし基本的には芽出し前の種イモを用い、植付け後に適度な培土と土壌水分確保を図る栽培体系でした。
СН-4Бは播種時に畝を立てる「グレン植え」と平畝植えの双方に対応しており、春先の土壌条件や品種に応じて農場が選択できるようになっていました。
湿潤冷涼な北西地域では畝立て(グレン)植付けが多く、乾燥した南部では平畝植付けが採用される傾向がありました。
また、石の多い土壌でもオプション部品により対応し、厳寒地でも植付け機そのものは寒冷に強い機械式のため、限られた期間で作業を完了させることができました。
現代までの活用
ソ連・ロシアのじゃがいも植付け機(Картофелесажалка)は、堅牢さ・簡易さ・大量処理能力を兼ね備えた農機として発展し、その代表格がСН-4Бでした。現在でも農場の片隅に眠るСН-4Бがレストアされて現役復帰する例もあり、その設計思想と実績は色褪せていません。Белинсксельмашをはじめ各メーカーは、こうした伝統的機種に現代的な改良を加えつつ、今なおロシアや周辺国のジャガイモ生産を支え続けています。
参考資料・リンク
- Белинсксельмаш公式(ロシア語)
- Wikipedia: Картофелесажалка
- СН-4Б中古情報(Agroserver)
- Motokov - Wikipedia(英語)
- ポルタヴァ農機工場(ウクライナ語)
- SU1410886A1 - ソ連時代の芋植付機特許(Google Patents)
- Белинскスельマシュ工場史(ペンザ地域史、ロシア語)
- KSM-4 (チェコスロバキアの植付け機)